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土地の購入と日影規制の関係とは?注意点やそれ以外の制限について解説
不動産の購入をご検討されている方は、その土地に思わぬ落とし穴が潜んでいることがあります。
一日中ではないにしろ、大きな建物の影になり日当たりが悪かったり、逆に自分の家があるために隣家の日当たりが悪くなったりすることがあります。
ではその日当たりと日影についての規制である日影規制とはどういったものなのか、注意点やそれ以外の制限についてご紹介していきましょう。
土地を購入する際に気を付けたい日影規制とは
高度経済成長を成し遂げた日本は1970年代に入り、とくに都市部においてビルやマンションなどの高層建築物が一気に増えていきました。
立ち並ぶ高層ビルは、敗戦からの脱却と先進国への仲間入りのいわば象徴的なもので、国民はそれらを見ることで、その先の明るい日本の未来を想像したことでしょう。
しかしこの高層建築物はある重大な問題を抱えていて、それは建った後に住民が気付くことになり、あちこちでその問題に対しての訴訟が起こったのです。
その問題とは、地域に高層建築物が建ったことで今まで燦々と当たっていた日差しが遮られ、一日中日影で過ごさなければいけない環境へと追いやられたというものです。
これは日照権という言葉で今では広く知られていますが、ただこの日照権とはそれ自体が法的に定められているというものではありません。
日照権は誰もが最低限の日照時間を確保するための権利のことであり、法的にはその権利を守るために日影規制が建築基準法により定められています。
この日影規制とは住宅の周りの日照を確保することが目的で、日がまったく当たらないことを防ぐために、建物の高さを規制するもので、読み方は「にちえいきせい」です。
この日影規制はたとえば5h-3h/4mといった表記がなされ、一年でもっとも影が長くなる冬至の日を基準として、用途地域と高さによって決められます。
たとえば5h-3h/4mであれば敷地境界線から5~10mでは5時間、10mを超えると3時間までは日影になっても良いとされ、4mは地盤面からの高さを意味します。
この4mという高さですが、一般的な住宅の2階部分の窓の中心となる高さで、つまり部屋の中に日差しが届くということを基準としています。
用途地域の種類としては第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域であれば、「軒の高さが7mを超えるもの、または地階を除いた階数が3階」が規制対象です。
それに当てはまらない地域では「建築物の高さが10mを超える」ものが対象となりますが、自治体の条例によって個別に指定されている地域もあります。
このように日影規制は、地盤面が低い土地で日影を作る時間が短いほど規制が厳しいものとなり、高い建物は建てられなくなるのです。
土地を購入するときに知っておきたい日影規制の注意点
土地を購入する際の注意点としてまずは、その土地の日影規制の基準を調べるということで、これは各自治体のHPにてご紹介されています。
そこでは先述の5h-3h/4mといった基準が地域ごとに掲載されていますが、もう一つ敷地内外の高低差、および真北方向の測量が必要となってきます。
隣接する土地と購入予定、もしくは所有する土地の地盤面の高さが違う場合、制限の緩和が設けられることがありますので、明らかに高低差があれば必ず計測しましょう。
またこの真北方向については磁石が示す北の方角とは若干のずれがあり、後述する北側斜線制限について重要な項目となってきますので、かならず確認してください。
自治体のHPで調べた結果、対象の土地が規制対象区域外であった場合でも、高さが10mを超え近隣の規制対象区域内に日影を生じさせるのであれば規制の対象となります。
ほかにもたとえば複数の日影規制制限があるような立地であれば、厳しい制限を課され、その土地よりも厳しい規制がある土地に隣接していればさらに厳しい制限となります。
同じ土地に2つ以上の建築物となるケースでは、それらの建築物を1つとみなして規制が適用され、違う用途地域にまたがる場合は規制対象ではない地域も規制の対象です。
ただこういった日影規制は実際、それほど厳しいものではなく具体的には一般的な2階建ての一戸建てであれば規制にかかることはほとんどありません。
しかし逆に言うと2階建て以上、つまり3階建ての住宅の建築をお考えであれば、規制の適用物件となりますので、こちらも重要な注意点の一つと言えます。
さらに、2階建てであれば規制対象にならないわけですから、2階建ての住宅が作る日影に対しても規制がありませんので、隣接する物件にも注意しましょう。
趣味でガーデニングをされる方にとっての注意点ですが、日影を作る対象物は地表から1.5mないし4mの高さでの計測となり、庭がずっと日影となるケースもあるのです。
日影規制はあくまでも、日影ができる時間を規制するものであって、一日中日差しが降り注ぐ環境を担保するものではない、ということはあらためて認識しておきましょう。
購入予定の土地における北側斜線制限とは
北側斜線制限は、自分が建てる家の北側にあたる建物がある場合に、その建物の南側からの日差しを確保できるようにするための制限です。
この制限が適用される用途地域は、第一種・第二種低層住居専用地域と第一種・第二種中高層住居専用地区で、ほぼすべての住宅地がそれにあたります。
ここで重要なポイントとなるのが真北方向の位置で、これは北極点の方向のことで、真北を知らなければ正しい日照を測ることができません。
では建物の高さをどう決めるのかということですが、低層住居専用地域で5m、中高層専用地域で10mという建物の高さを決めるための基準のポイントがあります。
この基準のポイントは真北方向の敷地境界線の上に垂直に上がったところに定め、そこから縦横比率が1.25:1の傾斜をつけて線をひきます。
この線のことを北側斜線と言い、建物を建てるときはこの斜線の内側に収まるように建てなければいけないというのが北側斜線制限です。
マンションの北側の部分に階段状のバルコニーが付いているのをよく見かけますが、これはこの北側斜線制限が適用されたものによる形状なのです。
ただ北側にあるすべての土地にこの規制が適用されるわけではなく、その場所の状況によっては規制が緩和されるケースもあります。
たとえば、北側にある隣地が自分の土地よりも1m以上高いところにある場合で、このケースでは高低差を調整することで規制が緩和されます。
その高低差の調整ですが(高低差-1m)×0.5という数式で、隣の土地が2m高いのであれば(2-1)×0.5で0.5mの高さのところから北側斜線の位置を求めていくわけです。
ほかにも北側に河川や水路が流れているような土地であれば、その河川や水路の中心線を起点にして北側斜線の位置を計算していきます。
これらのように北側の日当たりをさほど気にしないで良い立地であれば、制限の緩和策が設けられますので、比較的自由に建物を建てられるのです。
また第一種・第二種低層住居専用地域で、日影規制の制限があるところでは北側斜線の適用はなく、高度地区指定地域では1.25よりも厳しい値が定められることもあります。
まとめ
価格や立地など希望の条件に合う土地が見つかったとしても、購入の前にこの日影規制について調べておくことをおすすめします。
規制のために理想の家づくりができなくなることも考えられ、日当たりに問題があることもあります。
日影規制についてしっかり理解し、土地探しと家づくりに生かしてください。